自衛隊の給料と階級について
この記事では、一般的な高校・大学を卒業して入隊した人の昇級について解説しています。防衛大卒・防衛医大卒・高等工科学校卒・技術職として入隊した特殊な事例などは、省略しています。
自衛隊の階級
自衛隊の入隊方法はおおむね4つに分類されます。
- 自衛官候補生
- 一般陸曹候補生
- 幹部候補生
- 防衛大学上がり
全体のうち80パーセントが自衛官候補生、もしくは一般曹候補生として入隊します。入隊当初は図の左の「自衛官候補生」または「2士」という階級からスタートです。
自衛官の数はおよそ24万人と言われていますが、そのうちの80パーセントにあたる19万人が「士」「曹」の階級にいます。
「自衛官候補生」と「一般陸曹候補生」
自衛隊の募集は2パターンあります。
「自衛官候補生」
自衛官候補生とはいわゆる「任期制自衛官」の正式名称になり、この区分の人たちは、よく契約社員に例えられます。
「任期」という契約期間のようなものがあり、その期間を「任期中」と言ったりします。働く期間が決められているため、任期が終了すれば退官です。これを「任期満了」と言ったりします。
もちろん任期が終わっても継続の意思を伝えれば働き続けることもできますが、契約上は1度辞めて、新たに入隊した、というかたちになります。
任期制の自衛官には、毎月の給料のほかに任期満了したときに退職金のようなまとまったお金が支払われます。これを「任満金」と言ったりします。次に紹介する一般曹候補生には任満金はありません。
一般陸曹候補生
一般曹候補生は、任期制の自衛官に相対するするものとして、よく正社員に例えられます。任期がなく、定年退職の日まで自衛官として働きつづけることを前提として入隊する制度です。
自衛官候補生よりも、毎月の給与・昇級のスピードが若干優遇されます。
自衛官候補生&一般曹候補生の昇級
- 自衛官候補生
- 2士
- 1士
- 士長
候補生〜士長までの昇級は、入隊が同じであれば、全員同じタイミングで昇級します。しかし、それ以降については実力主義になるため、成績が優秀な人から順番に昇級することになります。
自衛官候補生、一般陸曹候補生が士長になるまでの期間
入隊からの期間 | 自衛官候補生 | 一般曹候補生 |
---|---|---|
入隊後 | 自衛官候補生 | 2士 |
6ヶ月後 | 2士 | 1士 |
1士 | 士長 | |
1年後 | 士長 |
地域、駐屯地、成績などで細部は変わりますが、自衛官候補生の手取りは最初は8万円で、士長になると約19万円です。最初の半年の教育が終わると自衛官候補生は一時任用金として10万円ほど支給されます。
一般曹候補生最初の手取りは13万円で、士長になると19万円です。自衛官候補生と比較すると、士長になるまでが6ヶ月早いため、3曹になるための試験を早く受けることができます。
任期制自衛官は曹にならなければ退官を余儀なくされる
任期を繰り返しながら継続している人でも、曹に上がるための試験をパスしなければ、必ずどこかで「打ち切り」となります。
しかしそれでも「昇任枠」がない、「定員」がいっぱい、などの問題に当たると、まだ続けたいのに辞めなければならないといったことが起きてしまいます。
「3曹」からの昇給は根気がいる
3曹から上に上がるには本当に長く、その先は実力主義の世界です。上の図では最短4年と説明していますが、4年の速さで2曹に上がるには、個人的に栄誉ある章を受賞しているなどの功績が必要です。つまり3曹から最短で2曹になる自衛官はほとんどいません。3曹のまま20年間が経っているという人も大勢いますし、昇級後にすぐに定年退職ということも十分あり得ることです。
また2曹から1曹に上がるのも最短で6年〜となるように、長期間、同じ階級にとどまることになります。昇級には時期はもちろんのこと、昇級枠がなければ上がることはできません。
昇級の評価基準としては、日頃の勤務状況はもちろんのこと、それより以前にさかのぼり教育中のことも関係します。「士長から3曹になる際の教育中にどれだけ優秀な章を取れるか」で左右されます。
幹部になるためには?
幹部を目指すなら、幹部候補生というものを受験する必要があります。自衛隊に一般曹として入隊したあとに幹部の道に進みたいという人は、幹部候補生を受験して、教育終了後、飛び級して曹長になるという流れになります。
自衛隊の定年退職の年齢
公務員は欠格自由にあたると「失職」します。定年退職もこれにあたります。どんなにまだ働きたいとしても、それは任命権者の裁量とは関係なく,必ず失うものです。
自衛隊の定年の年齢は、階級によって変わります。
2曹、3曹 | 54歳 |
曹長、1曹、准尉、1尉、2尉、3尉 | 55歳 |
2佐、3佐 | 56歳 |
1佐 | 57歳 |
年齢はこのようになっていますが「定年退職になる日」は一般とは少し異なります。一般的には定年となる年の年度末(3月31日)をもって退職になりますが、自衛隊の場合は「年齢を迎えた日」になります。つまり誕生日ということです。このように一般企業に比べるととても早いです。
自衛隊の退職時の平均階級
「1曹」「曹長」で定年(55歳)を迎える人がもっとも多いとされています。
階級表をみると半分もいっていないのに!と思うかもしれませんが、自衛隊の階級は簡単に上がるものではありません。3曹や2曹で定年退職(54歳)になる人も割合的には多いほうです。
自衛官は50代で定年退職になり、再就職の壁にぶち当たる
一般的な定年退職の60歳になれるのは、将官や将補の人たちになります。それ以外は、50代のうちに職を失うことになります。
もちろん「若年退職者給付金」といういわゆる退職金をもらうことになりますが、ほとんどの人が退官後の生活を支えるために、援護(協会)などの斡旋に頼るか、もしくは自分で探すなどして就職活動をしています。
しかしその体験談はどれも「レジや飲食店などの接客業か警備員、トラック配達員」の話ばかりです。
援護を受けても肉体労働ばかりであまり良い仕事に巡り会えないと言われていますが、さらに将補・将官に関していえば、再就職の斡旋は用意されていないため、セカンドキャリアが困難なものになっています。
佐官クラスが品出しのアルバイトをしているといったことも実際にある話なのです。
一般企業の役員でその年齢なら、それまで培ってきた豊富な経験値によって仕事に困ることはありません。むしろ取引相手や顧客を引き連れてこれる人脈がある分、ぜひとも雇いたいと名乗りを挙げる企業はたくさんあります。
しかし佐官クラスであっても、一般企業で求められるスキルやその企業に利益をもたらすような人脈がなければ、その年齢では低賃金の仕事しかないのです。
ということは、それ以外の自衛官も同じということです。特に幹部クラスを特別視しているわけではありませんが、役職の高い人がそうであるということは、民間の経験値・スキルがなければ誰でもそうなることを意味しています。
格差を経験することになる
一方、企業の定年は、2013年に政府が60歳から65歳へと引き上げました。2025年には定年制をしているすべての企業において「65歳」が義務となります。
これは単純に収入の差として現れることになります。もしあなたが、自衛隊を55歳で退官するとしたら、就業期間は10年間の差になります。
平均より低い年収で計算してみても、
350万円とすると10年で3,500万円の収入の差になります。
実際にはこれが5,000万円、7,000万円、さらに資産の累積的な効果を加味すれば、もっと大きな格差を生み出すことになるでしょう。
それにインフレの影響で、商品の値段がどんどん上がっている昨今です。今まで10,000円で買えていたものが、12,000円を出さないと買えない。給料の額面はまったく変わらないのに、出て行くお金は増えるといった状態です。
現実的に、退官したあとの平均寿命までの約25年間を退職金と年金だけで補っていくのは、現役時代にかなり節約して貯金していないと厳しいものとなるでしょう。
さいごに
50代の転職はかなり厳しいです。年齢という部分だけでもハードルは高いですが、ふつう勤務年数は評価されるのに自衛官においては「企業で働いた経験がない」といった点で、さらにハードルが高いものになっています。
そのような“後味の悪い”定年後の人生を送らないためには、早いうちから転職をおこなうか、民間資格やスキルを身につけるかの、どちらかをおすすめします。
(投資も選択肢の一つとして考える人も多いですが失敗がつきものです。資産を失うリスクがあります。収入を増やす方法としてより確かなのは、職業を変える、収入につながるスキルを身に付けることです。)
自衛隊は倒産しませんし、毎月ほぼ決まった給料が支払われるので、定年後の未来を今からでも予測できます。
これから自分はどれだけの収入を得られるのか知っておくことも大切な作業です。
一般企業を検討する際は、Milizoに相談してください。